練習のページ

競歩入門~一般レベル

練習の基本

基本はストロール

基本は何と言ってもストロールです。
これはジョギングを歩きに置き換えたものです。歩いて歩いて、まずは長い距離に耐えられる『足づくり』をすることです。

初心者の場合はたった30分歩いただけで、激しい筋肉痛に襲われるハズです。
ランニングでは使わない筋肉を使うので、膝の裏・つま先を上げる時に使う筋肉の2カ所は特に痛くなるでしょう。

初めのうちは長い時間歩くことが困難でしょうから、「ジョギングしてからストロールをする」「ジョグだけの日も作る」などして徐々に慣らしていきましょう。

インターバルやペースWといった練習は最初のうちは全くする必要がありません。
どんどん歩いて、膝をまっすぐ伸ばして歩くことに慣れましょう。
歩けば歩くほど、動きもスムーズになってくるハズです。

新しい動きをインストールする

【インストールの手順】

①課題を決める

②ストロール中に課題の動きができるようにする

③体に馴染んだらOK!!

【例】
膝が曲がっている
  ↓
膝を伸ばして歩く感覚を覚える(短い距離で流し)
  ↓
永続的に膝を伸ばせるように練習(ストロール)
  ↓
慣れて身に付く
  ↓
インストール完了!
  ↓
次の課題を決める

競歩はインストールの繰り返し

雑誌で勉強したり、審判からアドバイスを貰ったりして、自分の課題を把握しましょう。

これが出来る選手はどんどん速くなります。

【課題例】

  • 腕振り
  • 肘の角度を90°
  • 足を後ろまで残す
  • 膝を伸ばす
  • 上下動を抑える
  • ブレない軸
  • ブレーキが少ない接地
  • 足を低く運ぶ
  • スムーズな重心移動
  • 全身のリラックス

どんどんインストールして、フォームをバージョンアップしましょう

しかし、指導者によっても言うことが随分違います。例えば、

  足は踵から接地しろvs踵から接地するな

  ドリルはする必要ないvsドリルをしろ

全部の意見に耳を傾けていたら、何を信じていいのか分からなくなってしまいます。

ある程度競歩を続けていると、

「自分はこんな風に歩きたいんだ」

という自分の軸が出来てくると思います。どの情報・アドバイスが自分に合っているかは自分の頭で判断しましょう。

ストロールだけでいいのか?

ストロールだけでも速くなりますが、いずれは競歩でインターバルをするレベルに到達します。
そのときの為にも、走って体を追い込んでおきましょう。

入門してすぐは心臓を追い込む程速く歩くことができませんので、代わりに走ってインターバルをすると良いでしょう。

適度に走りで体を追い込みつつ、ストロールをどんどんやって競歩できる体を作っていきましょう。

ストロールがある程度できるようになり、スピードも出せるようになってきたらインターバルもやりましょう。

繰り返しますが、初めは無理に競歩でインターバルをする必要はありません。
心臓を追い込むほどの強度で歩けませんので、あまりやる意味は無いでしょう。
それよりもストロールのスピードを上げていく方が効果的です。
ストロール中でもタイムを測り、だんだんと速く歩けるようになっていきましょう。
遅く歩くのと速く歩くのとでは、フォームの感覚が違います。
徐々にスピードを上げていき、速いスピードでのフォームに体を慣らしていく。
そのスピードに慣れたら少し上げて、また一段上のスピードの中でフォームに慣らしていく。
その繰り返しでいいでしょう。

結果を急ぐ高校生はインターバルまで急ぎがちですが、フォームが身に付いていない間にスピードを意識しすぎるとフォームを崩す原因にもなるので十分注意してください。

基本はストロール!
しかし、速く歩くフォームは速いスピードの中でしか練習することができません。
速く歩くフォームを身に付けるため、最後にペースを上げてみるなど工夫してみましょう。
最後に流し50m・100mなどを何本か入れることも効果的です。
ストロールの後は流しをする習慣を身に付けましょう。

流しも入れる

ストロールだけではスピード感覚を掴みきれないので、練習の最後には短い距離を何本か歩きましょう。
タイムを測る必要はありません。
速いタイムを意識し過ぎてフォームが崩れると意味がありません。
余裕を持って気持ちよく、駆け抜ける風を楽しみましょう。

+αで1000m

全くスピードの練習をしないのも面白くないでしょう。
たまには1000mを全力で歩いてみるのも効果的です。
最初のうちは最後までまともに歩けませんが、ストロールをするにつれ、日に日に力が付いてくるのが分かります。

初心者でもストロールやジョギングの後、たまには+αで取り組んでみましょう
基本はストロールなのでお間違いなく・・・

トレーニング方法

ペースW

目的はLT値を向上させること

これ以上ペースを上げたら急激にしんどくなるギリギリのペースで行う必要があります。このときの運動強度、乳酸が急に上昇を始めるポイントを乳酸性作業閾値(LT値)といいます。LT値が5'30"/kmの人がそれより速いペースで歩くとペース維持できなくなりますが、LT値が5'20"/kmに向上すればそのペースでも維持できるようになります。自分に合った適切なペースで最後まで歩くことで、さらに速いペースでも維持できる体になってきます。

最後にペースアップをする余裕があるようなら、適切なペースとは言えません。次回は全体のペースを少し速くしてみましょう。

インターバルトレーニング

ショートインターバル400m×10、坂道W×10など
スピード筋力強化・神経系の適合
ロングインターバル1000m×5~7、2000m×4~6など
持久力強化(基本はこっち)

ロングインターバルが基本

筋持久力の向上を狙うなら、基本はロングインターバル(1000m以上のインターバル)になります。5000mを25'00"の選手が練習中に25'00"で歩くことはできませんが、距離を1000m×5に分割することで5'00"/kmのスピードで歩くことができます。レースペースで長い距離を歩くことができるのがインターバルトレーニングの魅力です。

ショートインターバルは速い動きに体を慣らしたいときに行っています。持久力の練習としてはロングインターバルに劣りますが、持久力も鍛えながら速いスピードに挑戦することができます。体調不良等で練習ができなかったとき、早くスピードの感覚を取り戻したいときなどに僕はよく行います。

リカバリーの時間は短めに

不完全休息がインターバルトレーニングの絶対条件です。間の休憩時間を長くとりすぎても不完全休息になりません。1000m×α(間200mジョグ)の練習でなら、200mジョグを90秒以内でするべきかと思います。2分以上休んでスピードに専念したいときは、無理にインターバルをしなくても、レペティショントレーニング(完全休息を挟む練習)をすればいいでしょう。

2000mのインターバルでも、間は2分くらいになるようにジョグをするといいでしょう。

距離歩

有酸素能力の向上が目的

明確な距離の定義はありませんが、僕的には20km以上の練習としています。ペースWとして長い距離を歩くのもいいですが、ペースWより強度を下げることで精神的にも長い距離が歩きやすくなります。

長く歩き続けることによって持久筋が発達し、それを取り巻く毛細血管の発達が促されるようです。だから「毛細血管増えろ~」て気持ちで取り組むといいでしょう。

長い距離を精神的・体力的に歩けるようになれば、20kmWや10000mWの距離的な不安も小さくなり、自信をもってレースに臨むことができます。

レペティショントレーニング

レースペースを超えたトレーニング

インターバルの不完全休息とは違い、10~15分程度の完全休息を間に挟みます。よって、インターバルと同じスピードで練習していても意味がありません。レースペースよりも速いペース設定で行い、そのスピードを出すのに必要な筋肉を強化しましょう。

休息時はジョギング

じっと休憩していても乳酸は筋肉に蓄積されたまま、なかなか除去されません。ジョギングにより血液を循環し続け、乳酸の除去を促進しましょう。血液の循環を維持するためにも、ジョギングは遅すぎないようにするべきです。

坂道W

地面を押す力を鍛える

坂道では特に、小さい動きではスピードを出すことが出来ません。平坦なコースよりも意識して足を後ろまで残す必要が出てきます。よって、競歩の筋肉を鍛えるいい練習になります。

また、平坦よりも膝が曲がりやすくなるため、ベントニー改善の練習にもなるようです。(僕は実感ありませんが…)

「短距離の坂道を競歩で登ってジョグで降りてくる」を繰り返すのが一般的かと思いますが、ストロールや1000mインターバルなどをアップダウンのあるコースで行う方法もあります

また、運動神経を速い動きに慣れさせる目的で下り坂をハイスピードで歩くパターンもありますが、あまりお勧めしません。確かにランニングではこのような練習方法もありますが、競歩でこれをやってしまうと半月板損傷につながる可能性があります。ランニングと違って膝が伸びた状態で接地しますので、下り坂の膝への負担が強すぎると思います。

僕自身も半月板損傷で膝を痛めて(軽度)4カ月くらい競歩できない時期がありましたが、痛めた原因はたぶん下り坂での練習だったのではないかなぁと反省しています。

練習メニュー

練習メニュー①(基本型)

僕が大学の時にやっていた基本パターン。基本的にはインターバルとペースWを組み合わせて練習します。

70分ストロール
50分ストロール
1000m×5(間200mジョグ)
30分ストロール
70分ストロール
12kmペースW
OFF

【インターバルトレーニング】
5000mWに出場するとして、試合と同じスピードで5000mを歩くことは出来ません。 試合のスピードで5000mを歩くために距離を分割します。 ペースはレースペースと同じか、少し速いくらいに設定しましょう。 間のジョグはそれなりのペースで走ります。 不完全休息がインターバルの絶対条件で、5000mを分割して歩くのがこの練習の目的です。 200mジョグを90秒以内でするべきかと思います。 2分以上休んでスピードに専念したいときは、無理にインターバルをしなくても、レペティショントレーニング(完全休息を挟む練習)をすればいいでしょう。

【ペースW】
これ以上ペースを上げたら急激にしんどくなるギリギリのペースで行う必要があります。自分に合った適切なペースで最後まで歩くことで、さらに速いペースでも維持できる体になってきます。最後にペースアップをする余裕があるようなら、適切なペースとは言えません。次回はペースを少し速くしてみましょう。

【将来的な見通し】

5000mW専門選手になってはいけません。その先の10000mW、そして…

20kmW・50kmWを見据えて練習するべきです

オリンピックに認められている正式種目は20kmからです。20kmが想像できなくても、最低限10kmは意識して練習するべきです。

5000mだけ何とか歩ききれるようでは効率のいい歩き方とは言えません。距離が長くなれば、フォームの誤魔化しも効かなくなります。高校生でも練習で20km歩いている選手もたくさんいます。

練習メニュー②(社会人目線)

僕が普段やってるトレーニング例です。社会人の子持ち家庭の参考になるかもしれないので載せます。

仕事しながらだと、なかなか毎日練習するというわけにはいきません。そこに子供のお風呂や寝かしつけが加わると、かなり厳しいものがあります…。 どの本にも「睡眠は大切だ」と書いていますが、「じゃあいつ練習すればいいのか教えろ!」て反抗したくなります。

僕の場合は睡眠時間を削ってでも練習します(笑)

睡眠時間削ってでも練習時間を確保すべし

「睡眠時間をしっかりとれ」なんて綺麗事。日本社会の仕組みはそんな風に出来ていない。多くの選手は社会人になって引退していく。それが当たり前なのが今の日本社会。睡眠時間なんて規則正しく取っていたら練習なんてそもそも出来ない。僕は負けたくない!

12~16kmストロール
OFFor軽め
ポイント練習(ランニングクラブ)
OFFor軽め
12~16kmストロール
OFFor軽め
ポイント練習(ランニングクラブ)

【練習時間】
基本23時前後練習開始になることが多いです。24時過ぎてからスタートして20kmを歩いたりすることもあります。
睡眠時間を削るしか練習する手段は基本ありませんので、エナジードリンクなどで疲れを誤魔化しながら練習に励みます。
「睡眠は大切」とは言いますが、練習時間がない場合、練習時間を削って睡眠するよりは、睡眠時間を削って練習する方が効果があると実感しています。

水曜日だけは地域クラブの練習に間に合うように努力しますが、間に合わなければ22時以降に一人で練習します。

日曜日の仕事が無い日は早朝からの地域のクラブの練習会に参加します。

【クラブチームの活用】
学生とは違い、競歩仲間と一緒に練習する機会に恵まれません。そこで、僕が活用しているのは地元のランニングクラブです。地域のランニングクラブには様々な年代の方がいて、走るスピードも様々です。競歩で練習会に参加すれば、必ず競歩より速く走ってくれる人がいるので、十分な刺激になります。

【ストロール】
僕の中ではストロールはキロ5分~5分半で歩くようにしています。スピードストロールやビルドアップストロールのつもりでハイスピードで練習するときもありますし、20kmくらい練習するときもあります。

基本的にダラダラゆっくり歩くことはしません

【ポイント練習】
ランニングクラブの練習メニューに合わせます。7.5kmビルドアップ・1000mインターバル・10kmペース走・5kmや10kmの記録会などに競歩で参加させて頂いてます。必ず僕の前に走っている人がいるというのは励みになります!

【基本的な考え方】
「しんどい時は無理して練習しない」

「頑張ることと無理することは違う」

「最悪3日に1回練習できれば体力維持はできる」

「3日間練習しない日は作らない」

「3日に2日の割合で練習したいなあ…」

・・・・・・てなことを考えながら日々頑張っています。

練習メニュー③(超距離型)

僕の一番練習距離が長かった時期の練習メニューです。

独身時代に一時期やっていた10月~1月くらいの練習パターン。この時はGPS腕時計などなかったので、距離ではなく時間で練習してました。仕事帰りに軽く間食して20:30練習開始。10時過ぎてからお風呂と夕食という流れです。実家暮らしだと融通が利くので練習環境としてはバッチリでした!土曜日も午前は基本仕事でしたが、それ以外の時間は自由に使えるので180分ストロール(たぶん30kmちょっと)も頻繁にやってました。

今思えば、もう少し月~火・木~金の変化を付けても良かったと思いますが、これにより長い距離の抵抗が一気に無くなったのも事実です。

90分ストロール+流し
90分ストロール+流し
インターバルトレーニング
90分ストロール+流し
90分ストロール+流し
180分ストロール
OFF

【この時期の考え方】

競技としては充実した時期でしたが、この時の自分といえば

「何より練習優先」

「練習の妨げやから遊びに誘ってくるな」

・・・・・・てな感じになっていました。

学生の時はそれでもいいのかもしれないけれど、これでは狭い世界に自分から閉じこもっているようなもの。

当然出会いもありませんでした(笑)